お酒は百薬の長ってウソ?

お酒は百薬の長ってウソ?

お酒って幸せな気分にもなれば、ストレスを倍増させて悲しくなったり、普段我慢している鬱憤が爆発してしまったり。良くも悪くも精神に大きな影響がありますね。
二日酔いの日はもう二度とお酒なんて飲むものか、と思いつつ、喉元過ぎれば熱さ忘れ、また飲んでしまう。

お酒が身体に与える影響はどんなこと?これから年末年始でお酒を飲む機会も増えるし、飲んでいいことと悪いこと、悪いのはわかっていても付き合いもあるし。お酒を飲むのが1日の楽しみという方も。そんな時の対処法や飲み方の注意があれば教えて?

そして基本的にお酒が身体に悪いことはなんとなくわかっているものの、どうして悪いのか、身体や精神にどんな影響を与えるの?教えて?折茂Dr.!

実はアルコールが身体に与える影響はたくさんあるのです。

アルコールが影響しない疾患を探す方が難しいかもしれません。

生活習慣病:高血圧、糖尿病、脂質異常、肝炎、痛風、睡眠障害など
心臓病:不整脈、虚血性心疾患など
脳疾患:うつ、認知症、脳症など
がん:喉頭がん、食道がん、肝臓がん、すい臓がん、乳がん、大腸がんなど

世界保健機関(WHO)はアルコール摂取が200種類以上の病気と関連していると報告しています。
Q.
編集部:そんなにたくさんの病気と関わっているんですね。多少の病気リスクは知っているけれど、こんなにあるなんてびっくり。
少しの飲酒なら影響は少ないものの、出来ることなら飲酒ゼロが望ましいです。

2018年世界的に権威のある医学雑誌「Lancet」に少量の飲酒と疾患リスクに関する論文が発表されました。これは1990~2016年にかけて195の国と地域のアルコール消費量とアルコールに起因する死亡などの関係について分析したものです。これによると、少量の飲酒でも生活習慣病やがんのリスクが上がることが分かりました。「適量のお酒は体にいい」「酒は百薬の長」は実は本当ではありません。健康への悪影響を最小限にするなら飲酒量はゼロがいいのです。
Q.
編集部:昔から言われていたその言葉を信じていました。
適量のお酒は身体にいいは過去の話なのですよ。

少量の飲酒をする人は全く飲まない人に比べて、一部の心疾患や脳梗塞などのリスクが低下する(これを「Jカーブ効果」と言います)という実験結果が広く知れ渡り、少量のお酒を飲む方が身体にいいという解釈が生まれました。お酒を飲みたい方にとっては非常にうれしい結果です。これが本当なら大手を振って飲みに行けますね。また、飲み過ぎを注意された方が「アルコールは少しくらい飲んだ方がいい」とおっしゃるのを最近でも耳にすることがあります。ですが、一部の心臓病や脳梗塞を除くその他の疾患、例えば高血圧や脂質異常症、脳出血あるいは乳がんなど多くの疾患は、飲酒量が増えるほど少量であってもリスクが上がるのです。「適量のお酒は身体にいい」は過去の話だと思って下さい。
Q.
編集部:ええ!これから忘年会や新年会のシーズンなのに・・・
ただし、この結果は逆に下戸の方には朗報かもしれません。

せっかくお酒があって、お酒が好きな人、お酒を売りたい方もいらっしゃいますから、「少量の飲酒は体にいい」と思いたい気持ちも分かります。確かに、心筋梗塞や脳梗塞などの一部の血管の病気についてはその傾向が見られますので、「Jカーブ効果」だけ切り取ればそのように言っても間違いではありません。しかし、この結果からもお酒を飲んだ方が良いということではないので、お酒が飲めない方は安心して下さい。
日本人男性のコホート研究や欧米の研究結果から厚生労働省は2000年に推進するアルコール許容量を発表しました。純アルコールで1日20gまで。これはビール(アルコール度数5%)なら500ml、日本酒(アルコール度数15%)だと1合(180ml)、ワイン(アルコール度数12%)なら2杯(200ml)に相当します。女性の場合は体格や代謝能力の違いから男性の1/2~2/3程度までとされています。
Q.
編集部:それだけしか飲めないのですね。お酒好きには少なすぎる量ですね。
実は世界的には、もっと少ないです。

2018年に発表された論文では死亡リスクを高めない飲酒量は純アルコール換算で週100gとされているので、厚生労働省の基準よりさらに厳しいです。
少量の飲酒でもけっして身体にいい訳ではありません。お酒を飲む機会がある方は、ビール500mlあるいはワイン2杯程度までと覚えておいて下さい。たとえワイン2杯でも連日のむと週100gを超えてしまうので、週2日はお酒を飲まない日を作って下さい。また、食事と一緒にゆっくり飲むことも、アルコールの吸収を緩やかにするために大事です。
Q.
編集部:その量では足りない、もっと飲みたいのに。という方へ。(次号に続く)
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折茂 政幸
Masayuki Orimo
ウェルネス宮前クリニック 院長
千葉大学大学院修了
医学博士
専門 循環器内科
ヒトの身体は自然の摂理に従っていると僕は考えます。
普段の食事や体を動かすこと、十分な睡眠と過度のストレスを避けることが健康にとってとても大切で、何気ない日常の積み重ねが普段の体調や病気のリスクに大きく影響します。
また、個々の特性、体質はそれぞれ異なりますから、他の方と同じ方法では改善しないことがあります。適切な医学情報をお伝えし、一人一人の体質に合った治療を目指しています。