第21回ゲスト Barオーナー 町田佳子さん「答えのない仕事だから楽しい」 |
Q.佳子さんがBarを経営するきっかけは?
デザイナーズブランド全盛期の頃、大阪で十代から二十歳までVIVA YOUやhiromichi nakanoのアパレルショップ店員をしていました。それから知らない土地に行きたいという理由だけでたった15万円を握りしめて、上京しました。家も決めず、頼る人もいない状況でホテル暮らしをしていましたがあっという間にお金が底をつきました。でもたまたま知り合う人がみんないい人たちばかりで転々と家を間借りして生活を繋いで。今思うとゾッとしますよね。(笑)クラブが好きだったので、一人で行ったりしているときに銀座でスカウトされたのが飲食業に携わるようになったきっかけです。程なくして当時流行っていた芝浦のクラブがオープンする時にプライベートバーを任されました。その後、いくつかお店を手伝ったり任されるようになって22年前に自分のお店を持ちました。
Q.長年接客業をやってきて、それにはルールがあったりしますか?
うーん。アパレルも含めてトータルで36年くらい接客業をやってきていますが、答えのない仕事だからわからないのよね。だから面白いんじゃないかと思います。例え答えが出てもその先にもっと必要な答えがあったり。私たちの仕事って、応用編は見つかるけど100%の完璧はありません。相手も生身の人間でモノではないから。そうすると私たちが対応を変えてお客さんを上手に誘導していく。それがうまく行った時に調和が取れるようになります。でもお互いに人間だから、お客さんの方も私たちがどういう態度を取るかよく見ていますよね。
私はベテランの域に入ったと思うし、周りにもそう評価されています。でもやっぱり答えがないからつまずくし迷うんです。だからまた考える。「こんなに辛いことが…」ということも起こるから面白いし、やり続けるんですよね。今は自分のお店で皆と一緒に成長できる居場所があってよかったと思えます。私の先輩たちも同じ気持ちなんじゃないかな、きっと。 Q.もうやだ、辞めたいと思ったことは?
毎日辞めてやるって思っています。(笑)理不尽なことを言われて傷つくこともしょっちゅう。でも落ち込んだ時に不思議と天使や女神が降臨してきてくれます。「ここにきてよかった」「よしこさんに会えてよかった」って言ってもらえると、あぁ、続けてきてよかったなって心底感じるんです。店舗を増やさずに私が一軒のお店に拘っているのはここなんです。理由は一店舗もままならない状態だったら広げるのは無理でしょう?と考えているし、私はオーナータイプではなく現場タイプ。ここへ来れば私がいるよ、というお店にしたかったんですね。
Q.同じお客さんに対して困った人だと感じていても、受け入れられるのはどうして?
性格は変わらなくても、人は成長するからです。若くても歳を重ねていても関係ないんですよね。だから私はいつも成長を見守っています。お客さんもお店や人によって態度が違うものなので、他のお店で横柄な人でもうちでは素直だったりします。私が面と向かって言っちゃうから。(笑)
気に入らなかったら来なければいい。それは割り切っていますね。例えば私は、大事なお客さんが連れてきた困ったお客さんに無理難題なことを言われても、その方の顔が立つなら無理難題に応えたりします。そういうやり取りの中で私も成長させてもらっているんです。それが私のプライドでもありますね。 Q.幸せを感じる時ってどんな時?
お客さんが15年ぶり、20年ぶりにまだお店が続いていると信じて訪ねて来てくれたり、「上京したら絶対に行きたいと思っていました」と言ってもらえると、嬉しいですね。その来てくれた子が成長して、結婚してお子さんが生まれたとか、やんちゃだった男の子が立派な社会人になっていたりだとか。お店があるからこそいろんな報告をしに来てくれるし、知り合えることのない人たちと出会えることは宝物。みんなの成長が見られるのはとても幸せです。だからこそずっと現役でいたいですね。この感じる幸せは、仕事=プライベート。お客さんだけど友達。時には家族だと思っています。
ただ、その境界線が難しくて辛いこともありますけどね。 |
町田 佳子さん
1968年11月22日生まれ
大阪出身。アパレル業を経てBarオーナーへ。 ◇コンシダーマルの感想
コンシダーマルはお化粧ノリも良くなり、何より手軽に保湿できるのが助かります。 |
取材 コンシダーマルメールマガジン編集部 撮影 萩庭桂太 |
2023.02.01